地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ


もう一度コーヒーを口に入れるが、やっぱり杏が煎れたのと変わらない味。



「お気に召しましたか?」

「あぁ………」




杏が亡くなってから、一切コーヒーには手を出さなかった。


学園で昼メシを食う時、家にいる時、会社で仕事中の時…

いつも必ず…煎れたてのコーヒーを出してくれたから。



『なんで毎回煎れたてをくれんの?』

『だって…それが1番美味しいし、好きな人には美味しいものを出したいじゃない?』



エプロンをつけた杏が笑いながら言っていた。




「………24日まであと2週間ですね」

「……………」

「お嬢様は、毎晩お衣装選びで大変なんですよ。陸様も楽しみですね?」

「………別に。」



コーヒーをすすりながら、冷めた目で楠がいるであろう衣装部屋を見つめる。