もう一度コーヒーを口に入れるが、やっぱり杏が煎れたのと変わらない味。
「お気に召しましたか?」
「あぁ………」
杏が亡くなってから、一切コーヒーには手を出さなかった。
学園で昼メシを食う時、家にいる時、会社で仕事中の時…
いつも必ず…煎れたてのコーヒーを出してくれたから。
『なんで毎回煎れたてをくれんの?』
『だって…それが1番美味しいし、好きな人には美味しいものを出したいじゃない?』
エプロンをつけた杏が笑いながら言っていた。
「………24日まであと2週間ですね」
「……………」
「お嬢様は、毎晩お衣装選びで大変なんですよ。陸様も楽しみですね?」
「………別に。」
コーヒーをすすりながら、冷めた目で楠がいるであろう衣装部屋を見つめる。


