『なんでだよっ!?杏が死んでまだ一ヶ月も経ってねーんだぞ!?』


『……楠家の令嬢との婚約は、杏ちゃんに会う前から考えていたんだ。ちょうど良いじゃないか、彼女は死んだんだし……妃芽さんも杏ちゃん並の美人だろう?』


『杏の容姿と付き合ってたわけじゃない』


『そんなもん今更どうでも良い。12月24日がマスコミへの婚約会見だ。これからちょくちょく食事会に行くからな』


『杏を…………忘れろってか?』


『わかっていることを聞くな』




親父と交わした会話が、頭の中をぐるぐるとまわる。




楠家で婚約会見のことを聞かせられてから、一週間が経った。

楠は俺との婚約を大層喜び、学園に毎日手作り弁当を持ってくる。



一切食べないけど。