再び静かな部屋へとなる。
「………杏…………?」
呼び掛けても返事はなく、俺一人の声が空気に溶けていくだけ…。
『朝に鏡でも見たら?』
杏が言い残した言葉を思い出し、慌てて部屋の電気をつけた。
「…………ッく………」
鏡に映った俺の首筋には、一カ所だけ紅くて小さな花が咲いていた。
『あたしが来たって印ね』
杏の声が脳内を駆け巡る。
「………バカ杏………これじゃ…さらに泣きたくなんだろ……」
部屋の電気を消し、ズルズルと床へ座り込む。
深夜2時の出来事……。
朝…親父達に呼ばれるまで、暗い部屋の中で一人…泣きつづけた。
月明かりだけが……杏がいた場所を照らしていた――。


