何か言葉を発するよりも早く、体が動いていた。
「………ちょっと……陸……?」
「…………ッ………」
キョトンとする杏にはお構いなしに、ただ抱きしめる。
あの頃と少しも変わらない。
サラサラの髪も。
柔らかい肌も。
優しい声も。
甘い桃の香りも……。
なにひとつ変わっていなかった。
「しょうがないなぁ………」
小さくクスッと笑うと、俺の背中に腕をまわしてくる。
そのまま強く抱きしめ返してきた。
柔らかくて豊かな杏の胸が当たる。
その胸元からは、静かな心音が聞こえてきた。
「………本当に杏だよな…?」
「……そうだよ。陸が泣いてばっかりいるから、冥界の番人さんから泣き止ませて来いって言われちゃった…」
プニプニと俺の頬を押して遊ぶ。


