地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ


杏はもうこの世界にはいねーのにな………。



今でも、一目で良いから逢いたい。


後ろ姿だけでも良いから、逢いたい。




「夢の中だけでも逢えねーのかよ………」



一目だけで構わない。


この半月……一度も少しでも頭から杏のことが離れたことはない。





ベッドにもたれ掛かり、床に座ったまま……窓の外から部屋を照らす月を見上げた。


雲が動き、月を隠す。


月明かりが遮られ、部屋を真っ暗な空間へと変えた。




カタン…………



「誰だ?」


出入口の方で、何か物音がしたため…目を凝らす。




すると突然、


甘い桃の香りが俺の鼻を霞めた。



「え…………?」



目を見開く。