手をつけなかった夕飯をシェフのいる調理場まで持ち帰ると、それを見ていた全員がため息を漏らした。
「………今日もダメだったか」
「はい」
「……やはり杏樹様の料理しかダメなのか………」
「杏樹様の手料理なら、好き嫌いなく食べられてましたからね」
調理台に置いた料理を眺めながら呟く。
陸様は元々…好き嫌いが多く、我々も苦労していた。
しかし、杏樹様が滝本家で料理をされるようになった途端……ぴたりとなくなった。
杏樹様は陸様の嫌いなものをわかっていたようで、料理する度に調理の仕方を考えておられた。
臭いや独特の味があろうとも、杏樹様が料理されるとすべて問題がなくなり、美味しいそうに食べている陸様がいた。