長くてダメージがひとつもないサラサラの黒髪も。


白玉のように真っ白でキメの細かい肌も。


影が出来るくらいに長くびっしり生えていた睫毛も。


乾燥知らずでプルプルに潤っていたさくらんぼ色の唇も………




全てが黒へと変えられていた。





―――どうして杏がこんな目に遭わなきゃならねーんだよ?


あの杏樹だぞ?



普通の凡人じゃない。


頭脳明晰というのもあるが、彼女は他人にはない“力”がある。


本気で“力”を使うと――…簡単に人一人を殺せる。


そして――…死者を蘇らせることも出来る。


杏の“力”があったから、俺は現世に還って来れたんだ。





「………あの遺体は本当に杏樹なのか?」

「…………ホントだよ、滝本君」

「!?」



床ばかりを見つめていた顔を…とっさに声がした相手の方へと向けた。