ったく……何を忘れたんだか。

パタパタと駆け寄って来る杏を呆れ気味に見つめる。


「どうした?おやつか?菓子なら機内でも――………っ……!?」


“買えるぞ?”と続けようとした。

どーせ…杏ちゃんが欲しいモノは食い物だし。




しかしながら――…

杏ちゃんが忘れたモノは食い物なんかではなく、意外なモノだった。






スーツのネクタイを掴み、俺の体を屈ませ――…目の前には杏の顔がある。


「………ッ……//////」

「3日分の充電完了。行って来ます♪」



ペロっと舌を出して笑い、エスカレーターへ向かって行った。




「あらあら熱いわねぇ〜?」

「可愛いじゃない」



近くの椅子に腰掛けていたおばさん二人組が俺を見てクスクスと笑う。