地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ

ガクリと肩を落としていると…。


「咲さん…ここにいたんですね」


若い男の声がした。



「あら……及川君。ごめんなさいね、ちょっと会いたかった子がいたから…」

咲姉が杏を抱きしめたまま、その男の方を向く。


「………ッ……!?」


及川と呼ばれた男の目が見開かれ……一瞬で嬉しそうな表情になった。


「杏樹っ……!!」

「へっ?」


突然名前を呼ばれて戸惑う杏に、及川は笑顔で抱き着こうと駆け寄って来る。




「ちょっ……えっ…!?」


本能的に身の危険を感じたのか、とっさに咲姉から離れ……俺の背中に隠れた。


ギュッとブレザーの裾を握られる。



多分…本当は、正面から抱き着きたいんだろうけど。

体育館は人でごった返してるし、我慢してんだろうな。