はやる心臓を抑え、上がる呼吸を調える。


すると…



パタパタ…

廊下を走るスリッパの音が聞こえて来た。




「陸〜?起きた〜?」


静かに障子を開けて、杏が部屋の中を覗き込む。



「なんだ起きてたんだ」

ニコッと笑って中へ入り、俺の傍に腰を下ろした。


パープルのホルター型のチェックワンピを着て…シンプルなエプロンを付けている。



ニコニコ笑う杏を抱き寄せて痛いくらいに抱きしめた。

情けないが…手が震えていて止まらない。


「………どうしたの?」

「居なくなったかと思った…」

「なんで?あたしん家だよ?どこ行くのよ(笑)」


ケラケラと笑って、頭を撫でてくれる。



「昨日、どこにも行かないって指切りしたじゃん。あっ…でも、学園と柚莉ん家に行くのは許してね?」