社長椅子の下には、二人のネクタイやシャツが散らばる。


「杏………」

掠れ気味の声で名前を呼ばれて、口を塞がれた。




「声……我慢しなくて良いから…杏の聞きたい……」

「…………ッ………」


真っ赤になりながらも、抗えなくて…上げ続けた。





会社を出て…陸ん家に行った後も

何も考えられなくなるくらい『頑張ったご褒美』をもらって…眠った。





どうして陸が、こんなにも求めて来るのか……まだあたしは理由を知らずにいて…。


『居なくなったりしねぇよな……死んだりしねぇよな…杏……?』


最近…毎日見る夢で、恐怖を抱えていたなんて……

この時は、まだ知ることもなかった。


陸の夢が現実の悪夢になるのは、11月のことだった―…。