抱きしめられて、良くわかった。


あたしと陸の体温の差を。



急に、体が寒さでカタカタと震え出す。

陸の温かい腕の中にいるのに、さらに体温は下がっていくような気がした。


「杏っ……杏っ……」

「……陸……泣いてるの…?」

片口に顔を埋めて、存在を確かめるように強く抱きしめられる。


頬に伝っているのは、温かくて…しょっぱいモノ。

陸が…こんな感じになったのは、過去2回。

どちらも……あたしが病院で目を覚ました時だった。



「杏………逝かないでくれ……」

「どこにも行かないよ?ずっと…陸の傍にいる」


小さく震える陸の体を、抱きしめようと…背中に手を回すが……


「杏樹……じゃあな………」


気づいた時には、陸の姿はなくて……体温の低いあたしのみだった。