地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ

右手で頭を撫でながら、左手で背中をポンポンと軽く叩かれる。



「杏、落ち着け」

「……ヒクッ……」

「もう居ないから……な?」



王子様用の話し方ではなく、“ホント”の陸から耳元で囁かれた。



陸のブレザーを握りしめたまま…ゆっくりと顔を上げる。



「あーあー…(笑)……泣きすぎだね?」


微笑みながら、優しくあたしの涙を指先で拭われた。



「ホントは舌で舐め取りたいんだけど…我慢すっか」

「!?」



………聞かなかったことにしよう。


スルーした……のだが、何故陸が我慢したのか…次の瞬間わかった。




「陸様………なぜ神崎さんを抱きしめてるんですの?」