彼は6階の本屋で雑誌を立ち読みした後、ふたたび1階の花屋にやって来た。


「いらっしゃいませ~」

「あの……花束を……作ってほしいんですけど」

「プレゼントですか?」

「……はい」

「でしたら、こちらのバラなんかいかがですか?」

「あ、いえ、チューリップがいいんです」


そこで、彼は深呼吸して、言った。



「――その、淡いピンクのを、20本」



花束を受け取って店を出ると、彼は自分の家へ向かって歩き出した。