伝う玉梓【短編】

それを聞いて僅か視線を宙空へ泳がせ、思案げな表情をする。
目線と同じく上を向いた睫毛と控えめに白い指を添える口元が愛らしい。

やがて中断したのか終了したのか、彼女はまた僕に微笑みかけた。


「私はこの図書館の司書旁馬 汐(ツクリマ セキ)の妹で素音(ソネ)と申します」

「やぁこれはご丁寧に。いつもこちらに?」

「えぇ、身体があまり丈夫ではないものだから長く出歩く事が出来なくて」


兄も司書とは名ばかりであまりいないものですから私が代わりに、としかたないように笑った。


意識され鼓動を感じながら、僕にしては珍しくそれはよく喋ったように思える。

気が付くと、僕は家に戻って来てただ一人日の暮れた外を背に畳みに胡座をかいて座っていた。

彼女の笑みと、声ばかりが頭を反芻するのだ。