中を覗くと、中心を真っ直ぐ開けて並べられた本棚が奥まで続いており、左右の大きく取り付けられた細長い窓から差し込む陽光で照らされている。
奥行きのある建物の中央には螺旋階段があり、そのうえ天窓でもあるのだろう。
そこだけ光が斜めに中央へ差し込まれている。
カン、カン、カン、と、その螺旋階段の上方から人が降りて来る気配がして、やがて袴姿の少女が本の山を抱えて降りて来た。
戸口から覗く僕に、彼女はすぐに気が付いたようだった。
「こんにちは」
少し稚気のある、しかし穏やかですっきりとした声だった。
「ああ、どうも」
「あら?初めていらっしゃった方?」
僕が相俟な返事をする間に彼女は階段を降り切り、戸口の所で少し所在無く立ったままの僕の前まで来てまじまじと僕を見ると微笑んだ。
黒目がちな上弦の半月のような瞳。
飾り気なく束ねられた髪はふんわりと空気を多く含むようにして左の肩から前に流されている。
小柄で軽そうな、しかし綺麗に背筋の伸びた人だった。
「あぁ、失礼。本日三丁目の空き家に越して来た公家 章介と申します」
「まぁそれは…クゲはオオヤケのイエと書きますの?」
「えぇ」
奥行きのある建物の中央には螺旋階段があり、そのうえ天窓でもあるのだろう。
そこだけ光が斜めに中央へ差し込まれている。
カン、カン、カン、と、その螺旋階段の上方から人が降りて来る気配がして、やがて袴姿の少女が本の山を抱えて降りて来た。
戸口から覗く僕に、彼女はすぐに気が付いたようだった。
「こんにちは」
少し稚気のある、しかし穏やかですっきりとした声だった。
「ああ、どうも」
「あら?初めていらっしゃった方?」
僕が相俟な返事をする間に彼女は階段を降り切り、戸口の所で少し所在無く立ったままの僕の前まで来てまじまじと僕を見ると微笑んだ。
黒目がちな上弦の半月のような瞳。
飾り気なく束ねられた髪はふんわりと空気を多く含むようにして左の肩から前に流されている。
小柄で軽そうな、しかし綺麗に背筋の伸びた人だった。
「あぁ、失礼。本日三丁目の空き家に越して来た公家 章介と申します」
「まぁそれは…クゲはオオヤケのイエと書きますの?」
「えぇ」



