いつもの通り、『開館』の札の置かれた入り口を抜けると、石に全てを制限された中はひんやりと冷気を感じる程には冷えていた。
行きがけ曇り始めたので日光も弱いから、既に陳列した本棚の横に作り付けられたランプには火が灯っている。
誰に告げる気もないような入室の断りを呟くが、特に返事は返ってこない。
普段ならば素音さんが聞きつけて顔を覗かせるものだが、どうもその気配もない。
かと言って、まったくの無人を思わせる気配でもなかったため、僕は中を進んで行った。
…………………
「…?」
中央の階段の下まで進んだところで、温かみのない淡白な光の差し込む上の階から、ほんの微かに人の声がしている。
あまりにもかすかでここから言葉は汲み取れないが、その独特の細さは女性のものだろう。
素音さんが誰かと上で話し込んでいるのかもしれない。
何故か僕はその鉄製の階段を音を立てぬようゆっくりと上った。
階段を上ると、階下と同じ並びで整然と立つ本棚が、頭上に窓のあるここからは随分暗く沈んで見えた。
一階と違って、下にいる時に微かに漏れ聞こえていた声はここでは周りの壁に当たって回り、静かに辺りに響き渡っていた。
そのせいか、なんて言っているのか、結局のところ判然としない。
わかったのはそれでもその声は素音さんの声だと言うこと。
そしてそれが誰かに向けて話しかけられているわけではないらしいということだった。
行きがけ曇り始めたので日光も弱いから、既に陳列した本棚の横に作り付けられたランプには火が灯っている。
誰に告げる気もないような入室の断りを呟くが、特に返事は返ってこない。
普段ならば素音さんが聞きつけて顔を覗かせるものだが、どうもその気配もない。
かと言って、まったくの無人を思わせる気配でもなかったため、僕は中を進んで行った。
…………………
「…?」
中央の階段の下まで進んだところで、温かみのない淡白な光の差し込む上の階から、ほんの微かに人の声がしている。
あまりにもかすかでここから言葉は汲み取れないが、その独特の細さは女性のものだろう。
素音さんが誰かと上で話し込んでいるのかもしれない。
何故か僕はその鉄製の階段を音を立てぬようゆっくりと上った。
階段を上ると、階下と同じ並びで整然と立つ本棚が、頭上に窓のあるここからは随分暗く沈んで見えた。
一階と違って、下にいる時に微かに漏れ聞こえていた声はここでは周りの壁に当たって回り、静かに辺りに響き渡っていた。
そのせいか、なんて言っているのか、結局のところ判然としない。
わかったのはそれでもその声は素音さんの声だと言うこと。
そしてそれが誰かに向けて話しかけられているわけではないらしいということだった。



