ポツリと呟いた彼の言葉は風によってさらわれてゆく。 一寸の光も届かない冥府に住んでいる自分、反して彼女は眩しいくらい日の当たる地上に住んでいる。 自分と彼女では住む世界が違い過ぎる。 「ハデス様、そろそろお戻りになった方が宜しいかと。」 考え込んでいると、1人の従者が声をかけてきた。 「分かっている。直ぐ行く。」 ――私は人を愛してはならぬ。 「戻るぞ」 「御意。」 二人は闇の中へと消えていった。