ありがとう、と柏木さんは私にライターを手渡す。 ちょうど私が火をつけたタイミングで信号が赤に変わる。 柏木さんは身体をこっちに向けて煙草をライターに近付けた。 その仕草をじっと見ていると柏木さんが不意にこっちを見た。 う、わ…っっ。 私は慌てて目を逸らす。 柏木さんはふっと笑って顔を逸らすと煙を吐いた。 車内に充満する煙草の匂いを感じながら、私は顔を上げることができなかった。