「……はい」

「まったく、神官長の息子が、魔女と恋に落ちるなど、あってはならないことだ」

「姉は決して、魔女などではありません」

「私の息子をたぶらかし、殺したのにか?」


冷たい、神官長の双眸。
ルイは、俯いた。

やさしく、美しかった姉。
姉と、あの青年が恋をしたのは、ただの運命だ。
身分違いの恋だと、反対され、身を引こうとした姉を引き止めたのは、むしろ青年のほうだった。

姉が、幸せになれればいい。
ルイは、ただそう祈っていた。

けれど。

若い恋は、青年の父親の執拗な反対に、してはならない拒絶反応を示した。
民家から離れた湖畔で、青年は死に、姉は、生き残った。

ルイを支えてくれた、大切な姉。
姉のことだけは、ルイは、見捨てられない。