もうすこし。


もう少しだけ、ルイとの思い出を積み重ねて。
長い長いこれからの孤独を、後悔せずに過ごせるように。


「こんなに、人を大切に思ったんは、初めてやな」


呟いて、チャーリーは、窓から雨空を見上げた。

花瓶に挿してある、薔薇の花弁に手を触れる。
たちまち干からびて、色を失う花弁を、軽く握りしめて、砕いた。


「こんなふうには、してはならん子や」


ルイだけは、捕まえてはならない。
今度だけは、鬼から、逃げ切らなければ。