だけど大地があまりにもうなだれているので、私は口をつぐんだ。



ナツは不満そうにじっと私を見るけど、仕方ない。



というか私もますます気になるよ……!



結構長い間こんな不毛なやりとりをしていたようで、気付けば一限目終了のチャイムが鳴っていた。



教室に戻ろうとした私を、ナツが止める。



「待って。作戦をと言ったでしょ。

ここからは隠れながら行くわよ。
隠れもせずにのそのそ出て行ったら、移動してるうちに囲まれちゃうわ。
さすがに授業中は手出ししてこないだろうから、問題は休み時間ね。

あと放課後」



「うへぇ……」



授業中だけが気が休まる時間だなんて、ある意味地獄だ。



「なにその気の抜けるアホっぽい声は。

もっと気を引き締めなさいっつーの」



ぽかりと殴られる素振りが飛んできたから、頭を抱えて逃げる仕草をする。



こんな大変な状況でも笑えるのは、ナツと大地がいてくれるからだ。



一人じゃなくて良かった。