とろけるチョコをあなたに

「その、もしかして陣は正式なチョコレートの作り方を知っているのか?」

「まあ、売り物に出来る程度の物は作れる」

 その言葉を聞いて絵理は暫くオレの顔を凝視していたが、やがて意を決したようにこちらに向き直ると、いきなり床に手をついて頭を下げた。

「この御剣絵理、恥を忍んでそなたに頼み申し上げるっ! どうか私に正式なチョコレートの作り方を教えてはくれまいか! 私にできることなら何でもする。だから、どうか!」

 絵理の素っ頓狂な行動には耐性がついてきたつもりだったが、いきなり土下座されて思わず狼狽した。

 困惑して頭を掻いた後、絵理を抱き起こしてその場に立たせた。

「んな大げさに頼まなくたって教えてやる。いつもみたいに言いつけてくれりゃいいんだよ。オレはお前の執事なんだから」

 ベタな漫画とかだったらここらで交換条件を持ち出すんだろうけど、そもそも何で絵理がこんなに必死になってるかといえば青司の為であって。

 ここで弱みに付け込んで絵理を表面的に自分のものにできたとしても、空しいだけなんだよな。