とろけるチョコをあなたに

「電子レンジはもうダメだな。後で新しいのを買ってくるか」

 オレがそう言うと絵理は肩を落として落胆した。やれやれと頭を振り、自嘲気味に呟く。

「まさかチョコレートを電子レンジで溶かすのがこれほど危険な行為とはな……。つくづく己の無知が嫌になる」

「いやその。それチョコじゃなくてボウルのせいだから」

「何!?」

「金属を電子レンジに入れると危険だって知らなかったのか?」

「それが……。電子レンジを使ったのはこれが初めてなのだ。説明書を探したのだが、見つからなかった。仕方がなく見よう見まねで使ったらこのざまだ。笑いたければ笑うがいい」

 しょんぼりと肩を落としている絵理に追い討ちをかける気にはなれず、別の質問をしてみた。

「ところで絵理。チョコレートの作り方、ちゃんと知ってるのか?」

「溶かして再凝固させればよいと聞いた」

「……オーケー。まずはその認識から改めようか」

 おおかた直火にかけて溶かそうとして失敗して、電子レンジで溶かす事を思いついたのだろう。