とろけるチョコをあなたに

「絵理、お前もしかして」

「黙れ!」

 うん、とりあえず料理が壊滅的に苦手な事と、それに対して多大なコンプレックスがある事は解った。

「ま、怪我がなくて良かった。とりあえず換気して鍋片さないとな。こんな状態じゃ作業できないだろ」

「……うむ……。そうだな」

 恥ずかしさよりも現状を何とかしなければという思いが勝ったらしい。絵理は大きく息を吐くと焦げた鍋の片付けを始めた。

 レンジからボウルを取り出して改めて中を見てみたが、どうやら完全に壊れてしまっているようだ。金属を電子レンジに入れても、余程の事がない限り爆発などしないのだが、偶然に偶然が重なってこのような惨事になったようだ。

 直接的な原因は端に寄せた事でボウルとレンジの壁面が接触し、そこから火花が生じたせいだと思われた。

 ボウルの中にはチョコレートがほぼ溶けずに残っていた。

 金属はマイクロ波を遮断するし火花が飛ぶ危険もあるのでステンレスのボウルを電子レンジ調理に利用するのは愚の骨頂だ。しかし今それを指摘しても絵理をへこませるだけなので口には出さなかった。