“アイハラソウタに会って直接話した”

それだけで。

その事実だけで、私の中の黒髪の彼の存在が変わった。

恋って…良く分かんないけど…コワイ。

「もうすぐ卒業だしさっ、後悔残しちゃダメだよ?アズサなら男だって選び放題なわけなんだし!」

……何かいいこと言ったっぽいけど…最後のは何……?

「あっヤバ!鐘鳴ったっ」

私の親友のものも含めた、いくつものバタバタという足音が廊下から聞こえてきた。

何にしろ、アイハラソウタが学校にいないならどうにもならない。

制服の袖から見え隠れする包帯を見ながら、私はひたすら溜息をつくしかなかった