次の日も、彼は扉の前で座り込んで待ってた。

……ちゃんと教室で挨拶してきてんの?


美術室の中に入って私は準備を始める。

いつもは一人のが楽だから一人で作業するけど、別にアイハラソウタがいて嫌な気はしない。

むしろいつもより楽。

普段は全く着崩していない制服を。

腕まくりして、シャツのボタンを何個か外して、スカートを短くして、髪を結って上にあげる。

目の前には白黒のキャンバス。

その向こうに本物の彼。

視界の端に映った彼を見ると、唖然として私を見てた。

「ん?何、どうかした?」

「え…イヤ、なんか……アズサって、人変わるな」

「あぁ~…良く言われる」

色塗るときは人が変わるらしい。


私の手には既に黒い絵の具が付いた筆。