鶫はそんなことお構いなしに、
「草太、草太。怖いよぉ…」
笹丸が泣くとイライラするだけだが、鶫が泣いていると何か違うものがある。
みんなの好奇の眼差しに耐えながら、草太はなるべく優しく鶫の頭をなでてやった。
「あーっと…、もう大丈夫だって、多分。だから、な?」
「本当…?」
絡んだ視線に、感じたことの無い胸の高鳴りを覚えて、草太はますますわけがわからなくなる。
「大丈夫だ、もう妖怪はいないから。…多分」
多分としか言えない自分が、かなり情けない。
鶫の目の前で妖怪を退治できたらもっといいところが見せられたのに、と内心で舌打ちする。
「本当の本当にいない?」
「た…多分」
「本当の本当の本当?」
「あ、あぁ。…きっと」
頼りない応答が続いた後、
「よかったぁ!!」
「うがっ!?」


