「マジかよ…」
思わずつぶやいてしまう。
認めたくは無かったけれど、妖怪は本当にいた。
しかも寝ていたとはいえ、自分たちのすぐ近くにやってきたのだ。
豊が感嘆の声を上げて草太の寝床まで来る。
「すごいなぁ…。枕返し、だっけ?本当に実在したんだ」
「ね?だから言ったのに」
少し自慢そうに胸を張って、染が答えた。
鶫がさっきから黙り込んでいるから二度寝でもしているのかと思ったが、怖くて声が出なかっただけらしい。
草太が目ざとくそれを見つけ、自分の弱味を見せまいと鶫をからかいにかかる。
「何だぁ、鶫?お前、もしかして怖いのか?」
普段は反論してきた鶫も、もう何も言えない。
それどころか目に涙をいっぱい溜めていた。


