豊の怪談とはまた違う怖さに、その場の空気の流れが止まる。
凍りつくような感じは無かったが、床に縫いとめられたような妙な違和感は残った。
次に言葉を発そうとする人がおらず、草太は視線をさまよわせる。
年長者の意地もあって、草太は無理矢理に口を開いた。
「そんなわけねぇだろ!妖怪なんて、この草太様がぶちのめしてやる!」
「…そ、そうよね。みんなで戦えば怖くないわよ」
鶫も草太の言葉に影響されて、勇気を奮い立たせた。
いつもの強気が戻ってきたようで、
「っていうか何偉そうにしてんのよ、馬鹿草太」
と言いながら草太を蹴り飛ばしている。
笹丸はやっと戻ってきたいつもの雰囲気に少しだけ緊張を緩め、豊と染は表情を特に変えるわけでもなく、微笑んでいた。


