いきなり草太が立ち上がり、2人に向かって人差し指を突き立てる。
「お前らぁ!年長者バカにするなよ!?」
そして次は染の番だったにも関わらず、勝手に怪談を始める。
「いいか、ここから話すのは俺の実体験だ」
みんなの顔をぐるりと見回して反応を確かめてから、草太が語りだす。
「この前俺は、晩飯のおかずを近所の爺さん家に持ってったんだよ。
真っ暗で静かな夜だった…」
先ほどまでとは違う、草太には似合わない静かなしゃべり方。
しん、と辺りが音を失った瞬間、草太が頃合を見計らったように大声を出した。
「そのとき、暗闇に浮かぶ人魂を見ちまったんだよ!!」
「あぁ。それ、そこのお爺さんの家のたいまつよね」
みんなが息を呑んだのも一瞬のこと。
さっきの仕返しとばかりに、今度は鶫が種明かしをした。
「あのたいまつ、紛らわしいわよねぇ。まさか本当に人魂だと思ったの?」
人を小ばかにするような鶫の笑い方に、草太の顔が真っ赤になる。
その様子を見ると、どうやら図星だったらしい。


