豊の話はまだ続く。 怪談のせいか、夏だというのに指先が冷たく感じる。 「ちょうど今日みたいな夏の夜に、心配した村の人がお見舞いにいったんだ。 そうしたら…」 そこで豊の語りが止まった。 その次を促すのも怖かったが、ここで終わってしまうのも気持ちが悪い。 痺れを切らした草太が、 「そうしたら…?」 と聞き返すと、豊がほんのりと微笑んだ。 「女の人が、男の人の魂を引きずり出していたところだったんだって。 なんて言ったと思う? 《あともう少しで殺せたのに…》」