気まぐれ妖怪談もどき




鶫は両手を胸の前に垂らして、幽霊のようなポーズをとる。


「髪の長ーい女の人がいるんだって。
それでその人が振り返ったら…、顔が無いのよ!!」


「くだらねー」


横から入った冷やかしに、鶫があからさまに不機嫌な顔をした。

「何よ、人にしゃべらせといてそれ!?」


ふてくされて畳に寝転がっていた草太がむくりと起き上がって、


「だってよ、あの家で12年間生きてきた俺がその幽霊を見たことが無いって、おかしいだろ」

もっともな意見に、反論しようとしていた鶫も言葉が出てこない。


「騙されたんだよ、お前」