「さあ、どうだろうな。あの時は俺たちもまだまだガキで自分のことで手一杯で、ほかのヤツの事まで気が回ってなかったからな……。

それにしても、この鏡。なんか気になるんだよな……」

そういって姿見に近づいていく太陽を美名が止めた。

「待って。もう、自分から離れるなって言っておきながら置いてかないでよ。

なんだかその鏡、嫌な感じがするの。だから、もっと慎重に……」

「わかった、わかった。ほら、これで離れることはないだろう」

そういって、太陽は美名の手をしっかりと握った。

子供の頃は手をつなぐのなんて平気だったのに、久しぶりに手をつないだ太陽の大きな手に美名は少し驚いた。

そして、今まであまり感じたことがないような胸の鼓動を感じた。

「もう、子供じゃないんだから」

そう文句を言いながらも、美名はしっかりと太陽の手を握り返した。

そして、二人はゆっくりとその鏡へと近づいていった。



【イソゾス(入り口)・完】