どのような言い回しが、どういう言葉選びが、どんな間の作り方が、相手を安心させられ、逆に不安がらせるか、ゆいは熟知している。

相手の性格、思考回路、背景、状況、立ち位置――会話に必要な情報をあらゆる角度から分析して、ゆいは話す。

だからあらゆる言葉を断言するし、だから、

「……――いるわ」

「ひっ……」

ゆいが「いる」と言った時点で、少なくとも相田芽衣の中では、木霊の存在が立証された。

ゆいが特殊那智からや術を用いているのではない、彼女の話す事柄は、嘘すらも真となりうる。言うなれば場の雰囲気を作り出すカリスマなのだ。

神経を研ぎ澄まして的を射ることに青春を注いでいる、本来切れ者だろう相田芽衣も、ゆいの前では幼稚な子供同然だった。

「大丈夫、相田さん。私がいるから平気よ」

自ら煽った恐怖心だからこそ、それを溶かす方法も把握している。自分で蒔いた種ほど、摘み取りやすいものはない。

「ねえ、話して、聞かせて。アナタの木霊の呪いのこと。ね?」