あれは、タチの悪い冗談だったのだろうか。しかしなぜあんな冗談を。

彼女は事件とは、木霊とはなんの関係もないのだろうか。

だがならばなぜ――彼女は被害者の面倒を?

瀬戸岡亜美は怪しい。だが、怪しさの裏が取れない。

情報が足りないのだ。木霊の四辻と呼ばれる怪異を解剖するには、まだ……。

「――燈哉」

ゆいは、立ち止まる。すでに学生寮が見えてきていた。

「なんだよ」

「私、ほかに行くとこがあるわ。今野先輩のとこには、ひとりで行っといて」

「……へいよ」

燈哉は、ゆいがリアリストなのを誰より知っている。そして千里ヶ崎燈哉が効率を好むように、宮部ゆいは実直さを好む。

彼女の行動に無駄はない。

だから燈哉も、安心して彼女の補佐を務める。

「今野先輩は任せとけ。――で、お前はどこに行くつもりだ?」

「ふふん。事件が連鎖してるなら、それだけ被害者もいるでしょ。私達の身近には重要参考人がまだいるの、忘れた?」

「――相田さんか」

それは昨日、本来なら八木麻衣子より先に訪ねようとした、クラスメイト。

四辻巡りをしているうちに日が暮れきり、けっきょく足を運べなかった。

行ってみる価値は、ある。