桜木学園は高等部から、学生寮が認められている。寮は学園の西側にあり、合わせて学年にひとつずつ棟があてがわれている。

オートロックこそついていないが、三階建てのマンションである。冷蔵庫や洗濯機、テレビに冷暖房も備え付けられているので、学生寮は常に満杯である。

クラスメイトよりもさらに最近の被害者である女子生徒・八木麻衣子のところへ、ゆいは燈哉と赴いていた。二年生棟の二回、205号室である。

八木麻衣子は、部屋へ向かうまでに出会った生徒に聞き込んで収集した情報によれば、ソフトボール部に所属している、体育会系。多少の怪談話ならば鼻で笑い飛ばすほど気概のある人物だった。

「――それが、今やこれなの?」

「今やこれらしいな」

が、そんな女丈夫の根性は今や、どこかへ消え去ってしまっているらしい。

ゆいと燈哉は、八木麻衣子とそのルームメイト・今野佐紀の部屋の前で棒立ちしていた。インターホンにも、ノックにも応えないのだ。間違いなく、部屋のなかに気配はあるにもかかわらず。