小春(こはる)という名前は、お父さんがつけてくれた。


私の誕生日は、11月。


それなのに、お父さんが私を小春と名付けたのは、その日が、12月間近とは思えないくらい、暖かく、穏やかな小春日和だったからだそうだ。


冬は、悲しい。


草花は枯れ、虫たちは死に、動物たちは眠り、空はグレーに染まる、一年を締めくくる、最後の季節。


だから、お父さんは、私が冬生まれでも、生命が息吹く春という字を名前に入れた。


春のように、明るく、穏やかで、輝かしい未来が、私に待ちうけていますように…って。


そんな、期待と願いが、私の名前には込められていた。