小春日和

夕方、教育テレビに夢中のヒヨリを横目に、お母さんと夕食の準備をする。


リズミカルにまな板をはじく包丁さばきに、お母さんは感心したように頷いた。


「家事、ずい分、上達したじゃない?」


「そりゃ…」


毎日同じ事繰り返しやってればねぇ…と言いかけて、言葉を飲み込んだ。

本来、16歳の私がやるべきは、勉強であって家事ではない。


均等な大きさに刻まれたネギに視線を落とし、複雑な気持ちになった。


家事が上達したからといって、何になるのだろう?


将来、お嫁に行くことだってないのに。


急に、目の前が真っ暗になり、涙がこみ上げた。

先ほどすれ違ったセーラー服の女の子たちの後ろ姿に、思わず羨望の眼差しを向けた自分。


そして、今、私は彼女たちに激しい嫉妬を覚えている。


憎んでいると言ってもいい。


料理が下手でも、勉強ができなくても、輝かしい青春を謳歌している、名前も知らない、私とは全くの無関係の人たち。


彼女たちは、私が、二度と味わうことができない時間を、当たり前のように過ごしている。


私は、同年代の彼らが、何に喜び、涙し、怒りを覚えるのか、それすら知らずに一生を過ごしてしまうだろう。


人生の中で、まるで、えぐり取られたように欠けた時間。


輝かしい若い時代。


私だけが、置き去りにされている。