小春日和

妊娠が発覚したのは、卒業を目前に控えた中学三年の冬のある日。


その年、私は、人生で最高の幸せと不幸を両方味わった。


ヒヨリがお腹にいると知った時、私の選択肢に「堕胎」の二文字は存在しなかった。


子供だったと思う。
ものすごく、純粋だったとも。


子供が授かったら、当然のように祝福され、産むものだと信じていたのだから。


けど、彼は…。
ヒヨリの父親は、さっさり私とヒヨリを捨てた。

正確には逃げ出した。


今考えてみれば、そうなっても仕方ないのかもしれない。むしろ、当然の結果なのだろう。


なんせ、私は若かった。そしてまた、彼も若かった。



瞬く間に絶望へと突き落とされた、あの日の私。

結局、私は一人でヒヨリを産んだ。


世間知らずだったと思う。怖いもの知らずだったとも。


あの、冴えない15歳の私のどこにそんな勇気と決断力があったのか…。


もしかしたら、そんなものは無かったのかもしれない。


何か言い知れぬ使命感に突き動かされていたような気がする。


結局、私は卒業まで、妊娠を隠し通した。


でも、高校へ進学しないことで、クラスメートも先生たちも、私を心配したり、怪しんだりして、そのたびにはぐらかすのは、とても苦しかった。


でもまさか、妊娠だなんて、きっと、誰も予想していなかったはず。


何度も言うように、私は模範生で地味な女の子だったから。


けど、やっぱり、いつまでも隠し通せる話しじゃなくて、私がシングルマザーになったことはあっという間に広まって…。

今まで話しもしたことない人たちが、心配するふりをして、私を見舞ったり、父親が誰なのか探ろとしたり、嫌な思いをしすぎて、人間不信になったこともある。


だけど、家族がいたから、頑張ってこれた。


出産には大反対していた両親だけど、最後は私を支えてくれた。


それから、ヒヨリ。


ヒヨリがいるから、私は、ママは、どんなに辛くても頑張ってこれたんだよ。