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「今度は珪か。王様も必死だな」


邑丁は腕を組んだまま、しかし冗談めかしてそう言った。

今乗っている船は、真っ直ぐに珪に向かっていた。珪の騎馬隊は優れていると有名であり、陸攻めは断念することとなった。

「この船はさ、珪に向かってるんじゃないな」

「じゃあ何処にだよ?」

「地獄、だ。俺達が今向かっているのは国なんかじゃない」

「…どういう意味だ、邑丁」



―生きて戦えば生き地獄を見る。死ねば人殺しは地獄へ堕ちる。

そういうことだよ。



そう言った邑丁の顔は、出陣前の戦士の顔に変わっていた。

今からすることは唯一つだ。
殺し殺して、生き延びること。