「こんな獣耳ぃぃぃっ」


「だから早まってはいけませんよ。切らなくともあなたのウサ耳を取れる方法がありますから」


柄を掴むクロスの手が離れる。


本当ですかっ、と神様の救いでも見つけた姿でいれば、彼女は頷いた。


「クロス、これは夢なのです」


「はい?」


「空想元素たる夢をいじり回し、アフロディーテの魔導書を駆使した悪者がこの世界を作り上げました」


「はあ……」


「名を“世界の終焉たる災厄”(ラグナロク)。夢をいじるだけでなく、私たちの意識をこちらに呼び出し、舞台を整えた演出者が彼女です」


「え、と……」


「一から舞台を作り上げるのはなかなかにハードルが高く、見たところある物語をモチーフにしたストーリーが始まっているようですが。

私たちの目的はこの世界(舞台)そのものをぶち壊すことにあります。それが、ラグナロクに拮抗するための唯一の策なのです」