私がなんとかしなきゃ、手遅れになる前に。



家の近くまで来た所で、息を切らして立ち止まった。


久しぶりの全力疾走で足がもげそうだ。


荒い息を落ち着かせ、ふと森を振り返った。



私は目を見開いて、足を前へ進めた。


いない。


森の辺りを見渡しても、誰もいない。



彼の姿は、風のように跡形もなく消え去っていた。


あんな怪我をしていて、自力で歩けるはずがない。



「ダーク......? 」



冷たい風が私の体を包み込む。



Buuuと急にスマホの電源が入った。



確かに腕に残る感触。




あれは、幻だったのだろうか。