そう微笑んで、その滴を彼の唇に落とした。



「守ってくれて、すごく嬉しかった。 ありがとう 」



一筋の涙が彼の頬を伝うと、額や頬の傷が薄れ始めた。


腕や足からも傷が徐々に消えていった。


私はほっと胸を撫で下ろすと、隣に横たわっている剣を手にした。


ゆっくりと立ち上がり、高みの見物をして腰を下ろしていたキュラド伯爵を見た。



「お前、何を考えている…… 」


「ルキア、ずっと好きだった 」



そう呟くと、私は自らの胸に剣を突き刺した。


ポタッと真っ赤な血が滴り落ちていく。



「樹里ーっ! 」



ダークの叫ぶ声が朦朧と遠くに聞こえ、目を覚ましたルキアが倒れ込む私を抱き抱えた。



「何を……う、胸が焼ける…… 」



キュラド伯爵は胸を押さえながら、這いずるようにその場に倒れ込んだ。



「樹里、なんでこんな事……! 守りたいって言っただろ! 」


「死ぬのは……もう怖くないよ。 私も守りたい。 これで、全て終わるから…… 」



目の前が霞んで来た。


荒くなっていた息が小さくなった、呼吸が乱れて来た。