君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜

一つの殺気が具体的に現したように近付いて来る気がして、マーナオは何気なく横を見た。


「うん?」

見れば老人が立っている。
顔は笑顔だがどこか作り物じみていて、むしろ狂気に近い。

「次か…連戦とはな」


凍った右脚は、力の根元を失ったからか普通よりは幾分か早く溶けていたが未だに感覚がなく、膝の周囲が溶けた時に筋肉が動かせなければ立つ事もままならないだろう。

「舐めるなよ」
深手を溜めれば勝てるなどと、思い上がりも甚だしい。


急に弊からゆかりの叫びが聞こえてきた。

「何で次郎が!?」
それは怒りを含み、
「次郎は父上の使役じゃない!」
弊からはそれだけが聞こえ、

「誰だ!試しは終わっているのだぞ!」
屋敷の方から、腹から出したかなり迫力ある声が流れてきて、離れていてもかすかに聞き取れた。