急にゆかりが牛車を停めた。

「降りるぞマーナオ」


降ろされたものの辺りには何も無く、到着したとは思えない。


ゆかりは侍女には乗っているように指示し、
「歩こうか」
そう言ってスタスタと歩き出した。

訳も分からず歩いていると、その後ろを牛車がついてくる。


「会場の手前でまた乗れば平気」
ゆかりがそう言って振り返り、
「夜風は気持ち良いだろう?」
また笑う。


その笑顔に知った人物を重ねてしまい、マーナオは落ち込んだ。

もしかして、それはマーナオを思っての行動ではないのか?
問いたくても声を発すること能わず、後ろ姿を眺めるのみだ。


目の前を行くのはゆかりという祈祷師だ。
むらさきではない…。