月光に縁取られた都大路を、スラリとした影が通り抜ける。


「ふん」
やや得意げな調子で鼻を鳴らしたその影は、
「白月の恩寵かげり、月影の弱き夜よ。
この程度で隠るとは情けない」
そう馬鹿にしたように言い放った。


そのシルエットは成人した男性のように見える。
ただ、月下とは言え灯りも持たず颯爽と歩く様は、夜の住人であると容易に連想させた。

盗賊か魔性か
静かに滑るように進む彼は、大路を逸れてもためらいなく、歩みが止まる様子もない。