先輩が引越す最後の日、先輩と待ち合わせをしたのはいつもと同じ家の前だった。
でも、違うことが一つだけある。
明日には先輩が隣にいない。
おじいさんの家までは和葉さんがついていく。
和葉さんが気を遣ってくれたのか、駅まで先輩とは別々に行くことになったみたいだった。
私は先輩と一緒にマンションを出る。そのとき、私の目の前に手が差し出された。
「行こうか」
先輩の言葉に笑顔を浮べる。
大丈夫。
先輩と最初に手を握ったのはテーマパークのとき。
私の迷子防止のためだったらしいけど、そんなことでも嬉しかった。
「まだ時間あるから、行きたいところがあれば言っていいよ」
先輩は荷物をほとんど持っていなかった。
そんなに荷物の入っていないショルダーバッグが一つ。そのために身軽にしてきてくれたのかもしれない。
「一つあります」
「どこ?」
「秘密」
言わなかったのは、先輩に気づいてほしかったからだ。
そんな場所は記憶の片隅に追いやられているのかもしれない。
でも、私にとっては大事な場所の一つだった。
この街に住んでいる人の中で、この場所をこんなに大事に思っているのは私だけだと思う。
でも、違うことが一つだけある。
明日には先輩が隣にいない。
おじいさんの家までは和葉さんがついていく。
和葉さんが気を遣ってくれたのか、駅まで先輩とは別々に行くことになったみたいだった。
私は先輩と一緒にマンションを出る。そのとき、私の目の前に手が差し出された。
「行こうか」
先輩の言葉に笑顔を浮べる。
大丈夫。
先輩と最初に手を握ったのはテーマパークのとき。
私の迷子防止のためだったらしいけど、そんなことでも嬉しかった。
「まだ時間あるから、行きたいところがあれば言っていいよ」
先輩は荷物をほとんど持っていなかった。
そんなに荷物の入っていないショルダーバッグが一つ。そのために身軽にしてきてくれたのかもしれない。
「一つあります」
「どこ?」
「秘密」
言わなかったのは、先輩に気づいてほしかったからだ。
そんな場所は記憶の片隅に追いやられているのかもしれない。
でも、私にとっては大事な場所の一つだった。
この街に住んでいる人の中で、この場所をこんなに大事に思っているのは私だけだと思う。