ハヤトもまた特殊な男だった。

ケンカの実力は相当なものだ。でもゲンやヒサジに比べると少し見劣りするのだが、それを加味しても何かしら特異な能力を感じる不思議な奴。

ケンカをしている時だけ人間味が出る男で、ケンカをする為だけに生きている様な危険な男らしい。

まぁそれは他の奴等が見たハヤトの印象なのだが、俺にはそうは見えない。

ハヤトは飢えている。

自分の目指す姿を早く完成させたいと。

楽しくてケンカをする奴とは一線を画す動機。それは自分という個を知らず知らずのうちに証明するが如く、自分の存在に違和感を感じている証拠。

自分が何なのかがわからない。ケンカは楽しいけど、それが自分の本当にやりたい事なのか?

俺は俺がわからない。俺は自分が何なのかが知りたい。

俺から見たハヤトは、そんなジレンマを抱えて生きている様に見える。

ある種のシンパシーの様に、俺の頭にハヤトの思念が入ってくるような気がして、そう思ったんだ。

ハヤトにタケシにヒサジ。

この3人が織りなす組織。少し見てみたい気がするな…。

俺はこの3人に接触する事を辞める事にした。こいつ等がこれからどう変化をして、どういった道を選び進むのかを見てみたくなったんだ。

この出会いが俺をジャッジタウンに2年もの歳月の間、縛り付けた出会いだ。

時間の許す限り、このジャッジタウンという町で過ごしてみよう。そして人間というものを近くで観察してみようと思ったんだ。

それと同時に俺の計画も練り直す。

そして情報も一緒に調べなおす。

兵隊を見つけ、人の操り方を学び、自分の牙を静かに磨く…。

軍隊よりも確実に。テロリストよりも無慈悲に…。

確固たる思想をこの手に掴む。

それが俺が作る虚像の存在。

ジンなのさ…。