「ようやく見えてきたな。物語の入口ってやつが…」

個人行動をとっていたエースは、独自の調べでとある場所に来ていた。

そこは、人気のまったくない山奥にある、巨大な倉庫の様な場所。過去に何かしらの製造をしていたのだろうが、今は捨て置かれているただの廃墟である。

夜中にでも来たら、さぞ良い感じの心霊スポットとして機能するであろう場所に、エースは足を運んでいた。

ハヤトが組織に潜入し、ジャックや銀次達が睡蓮会の情報を探っている中、エースは持ちえた情報を探ってこの場所に行きついていた。

捜査の具合は単純明快で、ハヤトに頼んでシンとカツミの指紋を採取し、エースが小宮に指紋を調べてもらったのだ。過去の犯罪歴などがあれば、簡単に調べがつくと考えての行動だったのだが、それが見事に的を得た。

カツミもシンも過去に暴力沙汰の事件を起こしており、警察に厄介になった時期があったのだ。普通なら、未成年の情報が開示されるなどあり得ない事なのだが、そこは公安部の力がものを言い、こうして情報を手に入れる事に成功した。

だが、小宮も相当危ない橋を渡ったのは事実だ。おそらく、自分の出来る事を精一杯してやろうという姿勢を見せたに違いない。

そして、シン達の足取りなどを一人で探り、この工場に行きついたのだ。

ホワイトとブラッグが抱えている工場で、一際異彩を放つこの場所に…。

エースは、まったく人気の感じない工場の入口に行くと、多少中の様子をうかがいながら一度大きめにノックをする。

念のために、足元に隠していた『カランビット』と呼ばれる特殊なナイフを手に取る。グリップの部分には、『飛鳥』と言う文字が彫りこまれており、恐らくはこれもエースの特注品である事が予想される…。

エースは、グリップエンドに小指入れ、しっかりと握リを確かめた後、工場の中に潜入を開始した。